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『美しき獅子の魂―日本とブルガリア』【在庫切れ】
池田大作 アクシニア・ジュロヴァ
1999年11月
シルクロードの「西」の要衝・ブルガリア。そして「東」の日本。両者の精神基盤である「東方キリスト教」と「大乗仏教」の探究をはじめ、スラヴ文明と東洋文明の対話が織りなした英知のタペストリー。ソフィア大学教授であるジュロヴァ博士と、女性論、家族論、芸術論もまじえつつ、21世紀の「精神のシルクロード」を展望する。
内容
【トピックス】
発刊に寄せて「寛容と民主主義の精神」――石神豊(PDF 424k)
序 池田大作
人類史の黎明期から、東と西を結んだ「シルクロード」の「西」への重要な搬点となり、「文明の十字路」であり続けたブルガリアは、「極東」の日本に生まれた私にとって、ロマンと憧憬の国であります。
美しき風土を擁し、スラヴ世界の広大な文明圏の淵源となったこの国は、一面、歴史において、長きにわたり外国の支配下に置かれるという試練を乗りこえ、獅子のごとき「強靭な精神」を有しておりました。その「美しき獅子の魂」に、私は、最大の敬意をいだいていたのであります。
一方、「シルクロード」の「東」、日本を含む東洋文明の基盤は、仏教、なかんずく大乗仏教であります。仏教の創始者、釈尊は、仏典で「獅子王」と呼ばれ、その言説は「獅子吼」と表記されております。私は大乗仏教の精髄、日蓮大聖人の仏法に出合い、「仏の大獅子吼」を学び実践するにおよんで、「シルクロード」の「西」に位置する「獅子の魂」とも、人類の未来のために「対話」したいとの想いをいだくようになったのであります。
かつて、シルクロードは、諸民族の文化と文明が接触し、交流し合う〝精神創造の場〟であり、仏教者にとっては、大乗仏教が西から東へと伝わった、「ダルマ・ロード」でもありました。現代における「精神のシルクロード」を創出したいとの私の思索が、1981年のソフィア大学での講演となったのであります。
今から18年前の、その年は、私の最初のブルガリア訪問でありました。建国1300年を祝う式典、スラヴ文字をつくり出したキュリロスとメトディウスにちなむ、「文化の日」の行事に出席し、その折、ソフィア大学での講演では、「東西融合の緑野を求めて」と題して、ブルガリアの偉大なる文化と精神への、私の「視座」を表明させていただきました。
翌1982年4月のこと、SGIの開催した「第1回中部青年平和文化祭」で、私は、長年の念願をかなえてくれる人物に出会ったのであります。ソフィア大学教授として、先年の私の講演もお聞きいただいた、ジュロヴァ博士であります。博士は、「スラヴ・ビザンティン研究所」の所長として、まさに、ブルガリア民族の精神文化を熟知されている碩学であります。
博士との対話は、必然的に、「東」と「西」の「獅子の魂」の由来と、内容への洞察から始まりました、第1章では、ブルガリアの宗教的基盤をなす、東方キリスト教と古代からの民族宗教をほり下げております。特に、日本の読者にとっては、これらの宗教を学ぶことは、ブルガリア文化とその「魂」を理解する鍵となりましょう。
第2章では、博士の質問に応じて、東洋と日本の文化の精神的基盤をなす大乗仏教を、日本への仏教到来から、鎌倉時代の日蓮大聖人まで論じました。東欧を含むキリスト教文明圏の方々が、仏教を理解する上で役立つことでしょう。
相互の思想的基盤を確認し合った両者は、第3章と第4章で、「人間」のつくり出す「文化」に焦点を当て、言語、音楽、芸術、文学、写本、さらに、家庭、女性論、近代化の課題を取り上げました。
第5章で、「生命の世紀」である21世紀に向けて、「獅子の魂」は何を語り得るか、地球的問題群、グローバル化の席巻する動乱の世界において、「精神のシルクロード」を、いかにして創出しゆくことができるか――その課題を、教育、宗教、文化交流、そしてブルガリアと日本の使命へと、展開していきました。
博士と私の思索のプロセスが、読者の方々にとって、希望の未来への「羅針盤」になればと念願しております。
1999年11月3日
序 アクシニア・ジュロヴァ
人類史の黎明期から、東と西を結んだ「シルクロード」の「西」への重要な搬点となり、「文明の十字路」であり続けたブルガリアは、「極東」の日本に生まれた私にとって、ロマンと憧憬の国であります。
美しき風土を擁し、スラヴ世界の広大な文明圏の淵源となったこの国は、一面、歴史において、長きにわたり外国の支配下に置かれるという試練を乗りこえ、獅子のごとき「強靭な精神」を有しておりました。その「美しき獅子の魂」に、私は、最大の敬意をいだいていたのであります。
一方、「シルクロード」の「東」、日本を含む東洋文明の基盤は、仏教、なかんずく大乗仏教であります。仏教の創始者、釈尊は、仏典で「獅子王」と呼ばれ、その言説は「獅子吼」と表記されております。私は大乗仏教の精髄、日蓮大聖人の仏法に出合い、「仏の大獅子吼」を学び実践するにおよんで、「シルクロード」の「西」に位置する「獅子の魂」とも、人類の未来のために「対話」したいとの想いをいだくようになったのであります。
かつて、シルクロードは、諸民族の文化と文明が接触し、交流し合う〝精神創造の場〟であり、仏教者にとっては、大乗仏教が西から東へと伝わった、「ダルマ・ロード」でもありました。現代における「精神のシルクロード」を創出したいとの私の思索が、1981年のソフィア大学での講演となったのであります。
今から18年前の、その年は、私の最初のブルガリア訪問でありました。建国1300年を祝う式典、スラヴ文字をつくり出したキュリロスとメトディウスにちなむ、「文化の日」の行事に出席し、その折、ソフィア大学での講演では、「東西融合の緑野を求めて」と題して、ブルガリアの偉大なる文化と精神への、私の「視座」を表明させていただきました。
翌1982年9月のこと、SGIの開催した「第2回世界平和文化祭」で、私は、長年の念願をかなえてくれる人物に出会ったのであります。ソフィア大学教授として、先年の私の講演もお聞きいただいた、ジュロヴァ博士であります。博士は、「スラヴ・ビザンティン研究所」の所長として、まさに、ブルガリア民族の精神文化を熟知されている碩学であります。
博士との対話は、必然的に、「東」と「西」の「獅子の魂」の由来と、内容への洞察から始まりました、第1章では、ブルガリアの宗教的基盤をなす、東方キリスト教と古代からの民族宗教をほり下げております。特に、日本の読者にとっては、これらの宗教を学ぶことは、ブルガリア文化とその「魂」を理解する鍵となりましょう。
第2章では、博士の質問に応じて、東洋と日本の文化の精神的基盤をなす大乗仏教を、日本への仏教到来から、鎌倉時代の日蓮大聖人まで論じました。東欧を含むキリスト教文明圏の方々が、仏教を理解する上で役立つことでしょう。
相互の思想的基盤を確認し合った両者は、第3章と第4章で、「人間」のつくり出す「文化」に焦点を当て、言語、音楽、芸術、文学、写本、さらに、家庭、女性論、近代化の課題を取り上げました。
第五章で、「生命の世紀」である21世紀に向けて、「獅子の魂」は何を語り得るか、地球的問題群、グローバル化の席巻する動乱の世界において、「精神のシルクロード」を、いかにして創出しゆくことができるか――その課題を、教育、宗教、文化交流、そしてブルガリアと日本の使命へと、展開していきました。
博士と私の思索のプロセスが、読者の方々にとって、希望の未来への「羅針盤」になればと念願しております。
1999年10月12日
目次
- 第1章 ブルガリア文化と東方正教
- 「獅子」の意味するもの
- 東と西のキリスト教
- 東方正教会の人間観
- ブルガリアにおけるキリスト教の受容
- ボゴミール運動の意義
- 第2章 日本文化と大乗仏教
- 日本における仏教の受容
- 聖徳太子と大乗仏教
- 日本における儒教・道教とキリスト教
- 仏教における美術の役割
- 鎌倉仏教と日蓮大聖人
- 第3章 人間と言語
- 音楽と民俗
- 『法華経』とブルガリア写本
- 民族と言葉
- "ヴァルナ文明"
- 第4章 人間と文化
- 芸術のあり方
- 伝統と近代化について
- 女性と家族
- 文学について
- 第5章 21世紀――〝生命の世紀〟の開幕
- 教育の使命
- 〃シルクロード〟と文化交流の意義
- 人類の生存と世界宗教
- 21世紀におけるブルガリアと日本
- ブルガリア史年表
- 関連地図
アクシニア・ジュロヴァ
1942年生まれ。1982年ブルガリア科学アカデミーから博士号を取得。1974年から84年まで同アカデミーで研究に従事し、84年よりソフィア大学教授。ソフィア大学付属スラヴ・ビザンティン研究のイヴァン・ドゥイチェフ研究センター所長、ユネスコのスラヴ文化研究国際協会副会長、ソフィア大学副学長等を歴任。エール大学(アメリカ合衆国)客員教授も務める。スラヴ語の写本目録をはじめ多数の記事・研究・書籍等の著作がある。ブルガリア芸術家連盟から芸術評論家賞(1974、82年)、ブルガリア科学アカデミーとソフィア大学から聖キリル・メトディー賞(1982年)、ドイツ連邦共和国から偉大な功労十字勲章(1989年)を受賞。