- HOME
- 論文・出版物
- 単行本・研究所編纂出版物
- 「女性の世紀」を創るために――共生・平和・環境(大乗仏教の挑戦6)
「女性の世紀」を創るために――共生・平和・環境(大乗仏教の挑戦6)
内容
主な内容
仏教に見る共生の思想――その現代的意義をさぐる |
川田洋一 |
仏典にみる女性たち――初期仏教をめぐって | 栗原淑江 |
グローバル社会における平和創出と女性 ――エンパワーメントをめぐって |
大島京子 |
池田思想に見る「人間の安全保障」 | 豊島名穂子 |
環境問題と女性――エコフェミニズムを超えて | 福井朗子 |
池田SGI会長の描く女性像(1) 女性の時代を拓いた中国の母たち | 大江平和 |
池田SGI会長の描く女性像② アメリカ史に残る「人権運動」 ――自己実現を遂げた信念の女性たち |
大野久美 |
東洋哲学研究所の栗原淑江主任研究員は、同書に寄せた「序」のなかで、掲載された論文を次のように紹介しています。
※ ※
本書は、現代の女性たちの活躍の潮流を背景に、仏教を基盤に全世界へと展開しゆく創立者の思想の具現化をめざし、当研究所の女性研究員を中心に、「女性の世紀」を創るための一里塚として編んだものです。
川田洋一所長による第1章「仏教に見る共生の思想――その現代的意義をさぐる」は、仏教の源流にさかのぼって、人間生命の内奥にある“差異へのこだわり”(煩悩)の克服を基盤に、万物共生、万人平等の理想社会を築きゆく道を築きゆく道を示そうとしています。仏教に説く、共生の思想としての「縁起論」を主軸に、日蓮の「立正安国論」、池田SGI会長の平和思想まで展開しています。
拙稿、第2章「仏典にみる女性たち――初期仏教をめぐって」は、仏典を通して、初期仏教における女性観について論じています。女性は梵天王、仏などになれないとする「女人五障説」、男性に変身しなければ仏になれないとする「変成男子説」など、仏教が女性に対する「抑圧装置」として機能してきたとする批判的な研究に対し、あらゆる思想は時代・社会の制約を受けることを考慮すべきとして、ブッダ在世当時は男女平等が説かれていたことを指摘し、時代を経るにしたがってブッダの思想とはかけ離れた女性差別的な思想が形成されてきた歴史を概観しています。
大島京子氏による第3章「グローバル社会における平和創出と女性――エンパワーメントをめぐって」は、現代社会における、平和創出に対する女性の力の重要性が論じられています。女性の権利保障、男女平等化など、女性の地位向上、個人の自立を促す内面的なエンパワーメントの必要性とともに、女性の自立を促し、平和創出に貢献するものとして、大乗仏教の説く、慈悲の精神に根ざした主体的で自立した菩薩的な生き方に注目しています。
豊島名穂子氏による第4章「池田思想にみる『人間の安全保障』」は、池田SGI会長が行った各種の提言や、識者との対談の中に見える「人間の安全保障」ということばを網羅的に取り上げ、SGI会長がこのことばに言及し続ける理由について考察し、SGI会長が語る「人間の安全保障」の内容と特徴について検討しています。制度や環境の整備にとどまらず、仏教の精神性を基盤とした、根本的な人間自体の変革が「人間の安全保障」の実現のための根本的道筋であることが提示されている、とします。
福井朗子氏による第5章「環境問題と女性――エコフェミニズムを超えて」は、環境問題の解決に向けて女性が重要な役割を果してきたこと、生活者として最前線にいる女性が環境問題に果たす役割が大きいことを指摘します。また、自己と環境の一体性を強調する仏教思想に期待が寄せられていることに触れ、仏教で説かれる「桜梅桃李」の教えのように、男女を問わず、それぞれの個々人がその特性を生かしつつ、それぞれの立場で一歩を踏み出すことが大きな力となることが力説されています。
なお、本書ではこれら論文と別に、「池田SGI会長の描く女性像」として二題を掲載しています。大江平和氏の「女性の時代を拓いた中国の母たち」は、香港の高名な画家・方召麐(ほうしょうりん)氏、近代中国初の女性作家で児童文学者であった謝冰心(しゃひょうしん)氏、周恩来総理の夫人であった鄧穎超(とうえいちょう)氏の波乱の生涯を紹介し、池田SGI会長が3氏に寄せる思いを語っています。
大野久美氏の「アメリカ史に残る『人権運動』――自己実現を遂げた信念の女性たち」は、『アンクル・トムの小屋』の作者で知られる小説家で、黒人奴隷制と戦ったストウ夫人、公民権運動の活動家ローザ・パークス氏、アメリカ第32代大統領夫人で社会運動家として世界的に知られるエレノア・ルーズベルト氏をとりあげる。池田SGI会長の思想と響きあう、生命と自由のための戦いに身を投じた女性たちの勇気ある生涯をたどっています。
「女性の世紀」とは、女性も男性も、人間として豊かに伸びやかに自己実現し、他者と共に幸福感を満喫し、理想社会の構築を目指す「人間の世紀」であるといえましょう。本書が、そうした時代を拓くための一助となることができれば幸いです。