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「女性の世紀」を創るために(2)――人権・教育・健康(大乗仏教の挑戦7)

「女性の世紀」を創るために(2)――人権・教育・健康(大乗仏教の挑戦7)

東洋哲学研究所編

2012年9月発行
1,100円(税込)
ISBN 978-4-88596-075-8

内容

主な内容

仏教の生命観と人権思想
川田洋一
仏典にみる女性たち――大乗仏教をめぐって
栗原淑江
フランスの女性をとりまく諸問題――女性の権利と子育てをめぐって
満足圭江
ロシアにおける女性運動
佐藤裕子
女性と健康――明るく爽やかな健康人生を送るために
片岡優華・稲光禮子
池田SGI会長の描く女性像(1) ブルガリアの女性たち
二宮由美
池田SGI会長の描く女性像(2) 逆境のなかで信念を貫いたヨーロッパの女性たち
蔦木文湖
池田SGI会長の描く女性像(3) 精神の大国・インドの女性たち
栗原淑江
池田SGI会長の描く女性像(4) 近代日本の女性教育に生涯を捧げた女性たち
梶川貴子

 

 

東洋哲学研究所の栗原淑江主任研究員は、同書に寄せた「序」のなかで、掲載された論考を次のように紹介しています。

             ※     ※

 

 

SGI会長は、人類が共有すべきビジョンとして、「人道」「人権」「持続可能性」の三点をあげます。

そして、「どの場所で起こった悲劇も決して看過せず、連帯して脅威を乗り越えていく世界」、「民衆のエンパワーメントを基盤に、地球上の全ての人々の尊厳と平和的に生きる権利の確保を第一とする世界」、「過去の教訓を忘れず、人類史の負の遺産の克服に全力を注ぎ、これから生まれてくる世代にそのまま受け継がせない世界」をめざすことを示しています。

さらに、「どんなに複雑で困難な課題に取り組む上でも、ビジョンから逆算して考えるアプローチが、混迷深まる現実社会の袋小路から抜け出すための“アリアドネの糸(道しるべ)”となり、変革の波を巻き起こすための代替案の源となると信じるからです」と述べています。

課題がいかに大きくても、現代を生きる私たちは、けっしてあきらめず、勇気をもって、力のかぎりその克服に挑戦してまいりたいと思います。本書も、ささやかではありますが、こうした課題の解決のための一本の“アリアドネの糸(道しるべ)”となることができれば幸いです。

 

本書で川田洋一所長が執筆した、第1章「仏教の生命観と人権思想」は、仏教の原点には、平和・共生の世界への釈尊の願いがあり、西洋近代に登場した人権思想にも、同様の理念があるとし、仏教と人権思想の関連性について考察しています。具体的には、第一に、「人権」そのものの基礎づけという哲学的考察を行い、第二に、人権運動としての仏教者の菩薩道という実践論を展開しています。そして、釈尊が示した平和・共生への道こそ、人権と「人間の安全保障」の基盤であると指摘しています。

拙稿、第2章「仏典にみる女性たち――大乗仏教をめぐって」は、大乗経典に現れた女性像を紹介しています。「一切衆生悉有仏性」を説く大乗仏教にあっては、当時の社会に根強かった女性蔑視・差別感をどのように乗り越えるかが課題となりますが、『維摩経』における「空」の法理、『勝鬘経』における勝鬘夫人の誓い、『法華経』における竜女の成仏などが、そうした課題にこたえています。本章では、それらを紹介し、その現代的意義についてもふれています。

満足圭江氏による、第3章「フランスの女性をとりまく諸問題――女性の権利と子育てをめぐって」は、現代フランス女性をめぐる問題を、そのライフスタイル、女性の権利と子どもの権利、働く女性を支える育児と教育のシステムという視点から考察しています。そして、それぞれに課題が残されている現状を紹介しながら、今後も社会の転換期における変化について注視していきたいと結んでいます。

佐藤裕子氏による、第4章「ロシアにおける女性運動」では、十九世紀末にロシアの女性解放運動を経て、世界初の社会主義国家となった旧ソ連の歴史における女性運動を概観しています。女性運動をロシアで誕生した「マルクス主義」や「ロシア正教」との関係から考察、前者は欧米とは違う展開をたどり、後者は女性の人権の保護、そして自立のために、どのような時代においても勇気ある草の根運動として女性たちの灯台となっていたことを解説しています。

片岡優華氏と稲光禮子氏が共同執筆した、第5章「女性と健康――明るく爽やかな健康人生を送るために」は、女性のライフサイクルの変化を通じて起こっているさまざまな健康問題を取り上げています。自律神経や女性ホルモン、ストレスのしくみを知り、日々の生活を工夫しながら、規則正しい生活をすることの重要性を述べています。さらに、“楽観主義”などを基調とした生き方により、心を磨き、互いに励まし合い、希望を持つことによって心を健康にして生きることを提案しています。

 

 

なお、本書では、コラム「池田SGI会長の描く女性像」として、四本を掲載しています。

二宮由美氏による、「ブルガリアの女性たち」は、文化大臣を務めたリュドミラ・ジフコワ氏、SGI会長と対談集を編んだアクシニア・ジュロヴァ博士について紹介しています。文化と教育の力で世界をよき方向へと変えてゆこうとする、彼女たちの懸命な生きる姿勢を、池田SGI会長は長編詩、随筆等を通して、最大に讃えています。

蔦木文湖氏による、「逆境のなかで信念を貫いたヨーロッパの女性たち」は、フランスの危機を救った英雄ジャンヌ・ダルク、ナチの嵐が吹き荒れるドイツで正義を叫び抜いたゾフィ・ショル、学術研究の分野で女性が活躍する時代を切り開いたマリー・キュリーを取り上げています、そこには、逆境に負けずに信念を貫く勇気ある生き方こそ、女性の幸福であるとの池田SGI会長の思いが込められています。

拙稿、「精神の大国・インドの女性たち」は、現代インドの二人の巨星、ガンジーとタゴールの女性観を、池田SGI会長と長年にわたり交流をあたためてきた識者たちとの対話のなかで浮き彫りにし、両者の女性観がインドの女性たちに大きな影響を与えてきたことを明らかにしています。次に、故ラジブ・ガンジー首相の夫人であるソニア・ガンジー氏とSGI会長の魂をゆさぶるような親交について紹介しています。

最後に、梶川貴子氏による、「近代日本の女性教育に生涯を捧げた女性たち」では、津田塾大学の創立者・津田梅子氏、その志を受け継いだ星野あい初代学長の生涯と師弟の物語、そして創価の女性教育について、池田SGI会長のスピーチとともに紹介しています。

 

 

本書が、「女性の世紀」を責任をもって担い、「女性たちが笑いさざめく社会」の構築のために尽くされている方々のために、少しでもお役に立てることができれば幸いです。

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