- HOME
- 論文・出版物
- 単行本・研究所編纂出版物
- 教育――人間の可能性を信じて(大乗仏教の挑戦8)
教育――人間の可能性を信じて(大乗仏教の挑戦8)
内容
内容
SGIの人間教育とその仏教的基盤 |
川田洋一 |
家庭・学校でのいじめ対策――深刻な事例から考える |
戸田有一 |
環境教育への視座――大乗仏教の知見から |
山本修一 |
教育の変化と展望――教育を担うのは誰か |
バーバラ・ドリンク |
書く力、考える力――牧口常三郎の作文教授法 |
伊藤貴雄 |
読書――自己形成と他者への想像力 |
柳沼正広 |
本論集は、東洋哲学研究所の創立者である池田SGI(創価学会インタナショナル)会長の「『教育のための社会』目指して」(2000年)、「教育力の復権へ 内なる『精神性』の輝きを」(2001年)、「地球革命への挑戦――持続可能な未来のための教育」(2002年)などの教育提言を受け、東洋哲学研究所の研究者が教育をテーマに多角的に論じたものです。
執筆者でもある伊藤貴雄・柳沼正広両研究員は、本書の「序」において、以下のように各論文を紹介しています。
※ ※ ※
本書では、池田SGI会長の教育に関する提言で示された内容を受け、それぞれの研究者が、自分の立場から執筆した論考を収録しました。
本研究所の川田洋一所長による第1章「SGIの人間教育とその仏教的基盤」は、池田SGI会長の二つの教育提言に込められた思想的メッセージを読み解き、さらにSGIにおける人間教育の理念を支える仏教教理を詳しく論じています。自己を確立するための四諦八正道や菩薩道の基礎となる縁起の智慧と慈悲の実践などを取り上げながら、仏教が広い意味での教育運動であることを示します。
戸田有一による第2章「家庭・学校でのいじめ対策――深刻な事例から考える」では、実際にあったいじめの被害者の体験を紹介し、いじめに対する心構えと実践的な備えを具体的に示しています。多くの研究成果に基づくその知見は、私たちが陥りがちな先入観を払拭し、被害者と加害者、教師と父母など、いじめに直接かかわる人々だけでなく、その他の多くの人たちにも、いじめの問題を解決していくための手掛かりを示してくれることでしょう。さらに、子どもが子どもを支えるピア・サポートの実践も紹介されています。
山本修一による第3章「環境教育への視座――大乗仏教の知見から」では、2002年の提言に示された環境教育の三つの段階を支える仏教思想の理念について論じています。すなわち、環境問題の理解と認識に関しては縁起と三世間と五濁の思想、倫理観の確立に関しては中道の智慧と持戒、そして行動へのエンパワーメントに関しては菩薩道の基本精神などを取り上げつつ、生命主体と環境との相互関係のあり方について仏教独自の考え方を提示しています。
バーバラ・ドリンクによる第4章「教育の変化と展望――教育を担うのは誰か」では、教育の責任は家庭が担うという考えが、ヨーロッパの近代において形成されてきた経緯を振り返りながら、現代においては、その考えにも大きな変化が求められていると論じています。ライフスタイルの多様化、情報化社会の到来による知識の拡大、そして生涯にわたる教育の必要など、高度に複雑化した現在の状況は、教育の責任を家庭だけで担うことを困難にしており、幼児教育から、高等教育、様々な訓練校、そして企業など、社会の様々な機構によって、その責任を分担していく時期に来ていると主張しています。
伊藤貴雄による第5章「書く力、考える力――牧口常三郎の作文教授法」では、創価学会初代会長の牧口常三郎の教育学について論じています。創価学会は、1930年に創価教育学会として始まっています。その原点は教師・牧口常三郎の「一千万の児童や生徒が修羅の巷(ちまた)に喘(あえ)いで居る現代の悩みを、次代に持越させたくない」との悲願です。本章では、現代の目から見ても優れた点の多い牧口教育学の原型はいかなるものであったのかを探究しています。
柳沼正広による第6章「読書――自己形成と他者への想像力」では、2001年の教育提言の中で、子どもたちの内面を耕す重要な回路の一つとして強調された読書について論じています。池田SGI会長の読書についての思い出や、日本の教養主義とアメリカのリベラル・エデュケーションを参考に、あらためて読書の意義について考察しています。
教育に携わる方々はもちろんのこと、教育に関心を持つ多くの方々が、いくらかでも本書から示唆を得ることがあるならば幸甚です。