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連続公開講演会「持続可能な未来と宗教」
◆開催日:2016年11月30日
◆会場:梅田スカイビル(大阪・北区)
講演内容は「東洋学術研究」に掲載
氣多氏は、京都大学文学部及び同大学大学院を経て、金沢大学教授等を歴任。2014年より、日本宗教学会の会長に就任している。宗教哲学、宗教学を専門とし、『西田幾多郎「善の研究」(哲学書概説シリーズ)』(晃洋書房、2011年)、『ニヒリズムの思索』(創文社、1999年)、『宗教経験の哲学―浄土教世界の解明』(創元社、1992年)等、多数の著作を執筆する。
講演では、文学や宗教などにおいて重要な概念として捉えられる「大地」について触れ、「大地は収穫の土台であり、ギリシャや日本の神話でも取り上げられる信仰の対象でもあります。それは、どこまでも広がるイメージとともに、特定の地域を指す言葉です」と語るとともに、あらゆるものを生み出す究極の母体が大地であり、生と死の繋がりの場所であることを述べた。
氏は、仏教学者である鈴木大拙の書籍等を通して、日本の宗教性や霊性などについて言及した後、「大地と聞くと過去のノスタルジーを感じることもありますが、現代にあって、その第一義的な意味は地球にあると考えます。科学の発展によって、大地は一つの天体としての地球と捉えられるようになりました。人間の住処としての世界が、科学によって相対化されたのです。大地はどこまでも続くものであっても、地球にはいつか寿命が訪れるのです」とした。
そして、地球が抱える諸問題群に対して、「私たちは地球に住むという選択をし、地球を作っていきました。それを自らの手によって環境破壊を行い、資源を食い潰していっています。こうした負の面を含めて、私たちは地球に住むことを引き受けなければなりません」「地球こそ大地なのです。それは、研究の対象や芸術の鑑賞品でも、使うべき資源でもありません。栄光と愚行の歴史を持つこの地球に住むことを、どう持続していくかが、大事な課題となるのです。こうした課題を前に宗教は、これまでの伝統とは違う形で、その方途を探っていく必要があるのではないでしょうか」と望んだ。