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連続公開講演会「持続可能な未来と宗教」
◆開催日:2016年11月17日
◆会場:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京・新宿区)
講演内容は「東洋学術研究」に掲載
加藤氏は、東京大学文学部及び同大学大学院を経て、千葉大学教授、京都大学教授、鳥取環境大学学長等を歴任。哲学、生命倫理学、環境倫理学を専門とし、『哲学の使命』(未来社)、『ヘーゲル哲学の形成と原理』(同)、『現代倫理学入門』(講談社学術文庫)、『脳死・クローン・遺伝子治療』(PHP新書)など多数の著作を執筆する。
講演では、地球環境におけるエネルギーの大量消費の問題に触れ、「今、私たちの社会は、恐ろしいほどにエネルギーを消費して生きています。石油が枯渇したら、どうなるのか。水が無くなったらどうなるのか。大変な問題です。そして、生物の種が減少していくという問題もあります。こうした状況によって、人間が地球に住めなくなっているのです。今あるものを大切にし、簡単に消費することなく循環をさせていくことができれば、持続可能に繋がっていけると思いますが、それをどう実現していくかが大切です」と述べた。
そして氏は、こうした現状を前にした宗教の役割について言及。仏教やキリスト教などの諸宗教が本来、自然と調和し、自然を守ることを教えていると論じるとともに、人間の欲望が拝金主義によって増長していることを強調した。そのうえで、「人間の欲望は自然に持っていたものだと思いますが、お金はそうではありません。不自然に欲望を増長させる存在であり、それを捨てることは非常に難しいのです。だからこそ、ここに宗教の役割があるのです」と語った。
最後に、統一テーマ「持続可能な未来と宗教」を総括する形で、「人は宗教を信じることで、はじめて、社会も自然も繋がっていることを分かっていくものだと思います。正しい情報を得ることで、より良い生き方を模索していくべきです。簡素で満ち足りた生活の魅力を伝えるのが宗教であり、あらゆる人々の欲望を停める精神力を働かせなければ、持続可能性はありません。今の時代は、あふれんばかりの情報があるだけでなく、かつてと異なり、誤った情報が淘汰されることなく、むしろ悪い情報が多い状況と言えるでしょう。そうした中で、自分が信じるに足る情報を得るためには、人間を信じられるかどうかが大事になってくるのです」と望んだ。