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連続公開講演会「持続可能な未来と宗教」
◆開催日:2016年10月3日
◆会場:TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京・新宿区)
講演内容は「東洋学術研究」に掲載
加藤氏は、法政大学卒業後、オーストラリア国立シドニー大学でPh.Dを取得。インドネシアのナショナル大学、フィリピンのデ・ラサール大学等を経て、中央大学総合政策学部教授。専門は宗教社会人類学、比較文明学。「インドネシアのイスラーム原理主義運動及び自由主義運動の展開」「インドネシアの土着信仰とイスラームの関係」「社会変化とインドネシアのイスラーム東南アジアの宗教と社会」等を研究領域とする。2012年には、トインビータルブット賞(国際比較文明学会賞)を受賞。現在、国際比較文明学会副会長を務める。
講演では、物事には「事実」と「真実」の二つの要素があることに触れ、目に見える事実と違い、真実は隠されていて簡単には分からない。イスラームの多角的理解とは、その隠された部分を理解することであり、こうした態度があってはじめて、持続可能な未来であり宗教へと繋がっていくものではないかと論じた。
また、フランスで起こったイスラームの風刺画の問題や各地で生まれる偏見に言及。「表現の自由の一方で、信仰にも尊厳があるといった視点で見ていかなければいけません」と強調した。
ムスリムが行う宗教的儀式である六信五行の本義について確認をしながら、「特にムスリムにとって大事な考えがジハードです。誤解を生みやすい言葉ですが、これには、物理的な争いである小ジハードと、精神的な戦いである大ジハードの二つがあります。大ジハードは、よりよいムスリムになるための闘いであります。つまり、人と会うことも、対話をすることも大ジハードなのです。戦闘的なイメージはあくまでも、ステレオタイプ化されたもので、イスラームでは本来、〝異教徒は大切にしないといけない〟と教えているのです」と語った。
最後に、現在のイスラーム社会における現実的な課題や諸問題を通して、ムスリムでも厳格な考えの人もいれば、柔軟な人もいる。理念に忠実な人もいれば、現実に合わせて様々な解釈をする人もいる。こうした多角的な見方をしなければ、本当の意味での共存は難しい。少しでもイスラームの多様性を理解していくことで、持続可能な未来を開いていきたいと述べた。