【シリーズ5】『東京大学総合図書館所蔵 梵文法華経写本(No. 414)ローマ字版』
創価学会「法華経写本シリーズ」5となる本書は、河口慧海が1903年にネパールから将来した紙写本のローマ字版である。奥書に書写年代に関する記述がないので、推測の域を出ないが、この写本は、17-18世紀に書写されたと考えられる。合計で118葉あるが、第107葉が散逸し、第119葉裏(119b)の縁起偈が途中で中断しているので、少なくとも第120葉まではあったはずである。終始、一人の書写生によって、麗筆のランジャナー文字で書かれ、誤写、欠落が比較的少ない、良質の写本である。第1葉裏(1b)の中央に描かれた仏陀と弟子たちの彩色画は、他の紙写本のものと比べると格段に精密に描かれている。
この写本は、1908年から1912年にかけてサンクトペテルブルクで出版された「ケルン・南條本」といわれる校訂本の校合に使用された写本の一つである。そのために、この写本の学術的価値はよりいっそう高まったといえる。
ネパール系の梵文法華経写本は、10-13世紀頃に書写された貝葉写本群と17-19世紀頃に書写された紙写本群に大別されるが、この紙写本には、両者の要素がみられる。貝葉写本群との関連では、「ネパール国立公文書館所蔵写本(No. 5-144)」とカトマンズの「アーシャー古文書館所蔵断簡」にほぼ一致し、紙写本群との関連では、「英国・アイルランド王立アジア協会所蔵写本」と、そのグループの紙写本群に極めて近い読みを保有している。
『東京大学総合図書館所蔵 梵文法華経写本(No. 414)——ローマ字版』
発行者:創価学会
編者:小槻晴明(東洋哲学研究所委嘱研究員)
発行日:2003年(平成15年)11月25日
ISBN:4-88417-008-3
原典所蔵機関:東京大学総合図書館
写本書写年代:17-18世紀
写本系統:ネパール系紙写本
ページ数:279+xxxvi 図版1ページ
出版形態:日本語、英語
非売品
謝辞――小槻晴明(東洋哲学研究所委嘱研究員)【PDF 181k】
凡例
- ローマ字版
- 序品
- 方便品
- 譬喩品
- 信解品
- 薬草喩品
- 授記品
- 化城喩品
- 五百弟子受記品
- 授学無学人記品
- 法師品
- 見宝塔品
- 勧持品
- 安楽行品
- 従地涌出品
- 如来寿量品
- 分別功徳品
- 随喜功徳品
- 法師功徳品
- 常不軽菩薩品
- 如来神力品
- 陀羅尼品
- 薬王菩薩本事品
- 妙音菩薩品
- 観世音菩薩普門品
- 妙荘厳王本事品
- 普賢菩薩勧発品
- (嘱累品)
付録Ⅰ:
梵文法華経写本研究史覚書――小槻晴明(東洋哲学研究所委嘱研究員)【PDF 344k】
付録Ⅱ:
A Concordance of Romanized Texts of Saddharmapundarika Manuscripts (2003)
参考文献
図版