【シリーズ8】『パリ・アジア協会所蔵 梵文法華経写本(No.2)―ローマ字版』
1837年、ネパール駐在イギリス公使だったブライアン・H・ホジソン(1800―1894年)は、ネパールで入手した貴重な仏教経典の数々を、フランスの「パリ・アジア協会」に送った。
ヨーロッパにおける仏教研究の草分けの一人である同協会のユジェーヌ・ビュルヌフ(1801―1852年)は、さまざまな経典の中に、完全な法華経の梵文写本を発見した。彼は、この梵文写本のフランス語への翻訳を即座に開始し、1839年に完成。さらに精細な注記を加え、1852年に出版された。ヨーロッパの言語としては初となるフランス語訳「法華経」は、哲学・思想界に衝撃を与えるものとなった。
基礎研究を進める仏教文献学者の間では、フランス語訳の底本となった、この写本のローマ字化が久しく待望されていた。今回の出版は、ビュルヌフ訳から150余年を経た世界初の快挙である。ローマ字版は、小槻晴明氏(東洋哲学研究所委嘱研究員)が完成させた労作。
小槻氏は語っている。「ビュルヌフ訳の思想的・学術的意義の大きさは、計り知れません。日本で法華経といえば鳩摩羅什の『妙法蓮華経』が主に研鑚されてきましたが、今回のローマ字化により、梵文原典とフランス語訳からの比較・検討という新たなアプローチが可能になりました。大乗仏教がヨーロッパ世界にどう受け入れられてきたか―その原点が明らかになるとともに、文献学的にも貴重な基礎資料となるでしょう。大乗仏教の精神を現代に展開する池田SGI(創価学会インタナショナル)会長によって、SGIが世界190カ国・地域に広がった今、法華経研究にも新たな地平が開けることを心から念願しています」
『パリ・アジア協会所蔵 梵文法華経写本(No.2)―ローマ字版』
発行者:創価学会
編著者:小槻晴明(東洋哲学研究所委嘱研究員)
発行日:2008年(平成20年)3月31日
ISBN:978-4-88417-018-9
原典所蔵ならびに協力:パリ・アジア協会
写本系統:ネパール系紙写本
ページ数:284+lx
出版形態:日本語、英語
非売品
略号一覧
凡例
- ローマ字版
- 序品
- 方便品
- 譬喩品
- 信解品
- 薬草喩品
- 授記品
- 化城喩品
- 五百弟子受記品
- 授学無学人記品
- 法師品
- 見宝塔品
- 勧持品
- 安楽行品
- 従地涌出品
- 如来寿量品
- 分別功徳品
- 随喜功徳品
- 法師功徳品
- 常不軽菩薩品
- 如来神力品
- 陀羅尼品
- 薬王菩薩本事品
- 妙音菩薩品
- 観世音菩薩普門品
- 妙荘厳王本事品
- 普賢菩薩勧発品
- (嘱累品)
参考文献