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【シリーズ16】『プリンストン大学図書館所蔵西夏文妙法蓮華経―写真版及びテキストの研究』

西夏は11~13世紀、中国西北部の要衝に覇を唱えた国家である。西夏文字も西夏語も使用者は絶えたものの、同地で興隆した仏教文化は、大量の仏教文献の形で現在に残る。また近年の研究で、その後の中国仏教にも少なからぬ影響を与えたことが顕かになっている。西夏の研究は現在でも、中国、ロシア、日本をはじめ、世界の研究者によって継続されている。

 

文献の主体となる仏教文献が、西夏のみならず東アジア・中央アジアの仏教研究にとって重要な位置を占めることは論を俟たないが、文献を用いた西夏語研究にとってもきわめて有用なものといえる。西夏文字は、時に非常に複雑な字形であり、漢字と異なる筆画を持つこともあるので、個々の文献について、原文の鮮明なテキスト、録文、訳注が公開されることが望ましい。

 

1990年代以降、ロシア所蔵コレクションが公開されたこと、特に2000年代以降、中国の研究が飛躍的に高まったことから、西夏学は大きく変貌しつつある。中国の出版社によって、ロシア、中国、イギリス、フランス、そして日本の西夏文献が、大型写真図録で公刊され、現在でも出版が続いている。東洋哲学研究所では2005年に『ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトペテルブルク支部所蔵西夏文妙法蓮華経写真版 (鳩摩羅什訳対照)』を刊行した。同書は、ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクトペテルブルク支部(現・ロシア科学アカデミー東洋古文書研究所)に所蔵される、西夏文「妙法蓮華経」を鮮明な写真版の形で発刊したものである。

 

本書は、アメリカ・プリンストン大学図書館に所蔵される妙法蓮華経の世界初の研究書である。ロシア所蔵本には現存しない、完全な「巻四」のテキスト部分および、西夏文を伴う仏図を収録したもので、これに東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の荒川慎太郎准教授による詳細な研究を加えている。今回の刊行によって、西夏文妙法蓮華経の研究の一層の推進が望まれている。

 

『プリンストン大学図書館所蔵西夏文妙法蓮華経―写真版及びテキストの研究』
創価学会「法華経写本シリーズ」16※シリーズ2が写真版、ローマ字版1、ローマ字版2に分かれているため、シリーズのナンバーでは16、出版の通巻では18点目となる。

発行者:創価学会、東洋哲学研究所

発行日:2018年(平成30年)11月30日

ISBN:978-4-88417-094-3

編著者:荒川慎太郎(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所准教授)

写本系統:羅什訳漢文法華経からの西夏語訳

出版形態:西夏語、日本語、英語

ページ数:206 + LIV

非売品 


目次

 まえがき  
第I部:研究編 
  1-1 西夏文『法華経』の文献学的改題  
        1.1.1. はじめに-西夏と西夏仏教における『法華経』 
        1.1.2. プリンストン大学所蔵西夏語文献 
        1.1.3. プリンストン大学所蔵『法華経』とロシア所蔵本 
        1.1.4. プリンストン大学所蔵『法華経』の仏図と内容 
  1-2 言語学的に見た法華経の西夏語  
        1.2.1. 西夏語と動詞句 
        1.2.2. 西夏語の方向接辞 
        1.2.3. 西夏語の人称代名詞と人称接尾辞 
        1.2.4. 本資料における西夏語の文法の小結 
  出典略号 
  文法要素略号 
  参考文献 

第II部:テキスト編 
  凡 例 
  2-1 扉絵(仏図)の西夏文 
  2-2 序の西夏文 
  2-3 経題の西夏文 
  2-4 法華経第四巻本文 
           五百弟子の受記品  第八 
           学有る・学無い人の受記品 第九 
           法師品 第十 
           宝の塔を見る品 第十一 
  索 引 

第III部:図版編
 『妙法蓮華経典』巻第四

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