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「法華経――平和と共生のメッセージ」展(ネパール)
ネパール展
概要
「法華経――平和と共生のメッセージ」展が、釈尊生誕の地であるネパールで初めて開催された。首都カトマンズの3会場で行われた展示会では、法華経写本と関連文物、多数のパネルなどで“法華経の世界” を視覚的に伝えた。
◆主催:東洋哲学研究所、ネパールSGI
◆後援:国立トリブバン大学中央図書館、ロータス研究センター
◆会場・開催日:ネパール平和会館(2010年7月31日)、トリブバン大学(8月1~2日)、ロータス研究センター(8月3~4日)。いずれもカトマンズ
新聞報道から
(聖教新聞2010年8月11日付)
東洋哲学研究所とネパールSGI(創価学会インタナショナル)が主催する「法華経――平和と共生のメッセージ」展(後援=国立トリブバン大学中央図書館、 ロータス研究センター)が7月31日から8月4日、ネパールの首都カトマンズで開催された。
“釈尊生誕の地”である同国での法華経展は初めて。同展の開催地はこれで、世界10カ国・地域となった。開幕式は7月31日、ネパール平和会館で行われ、ルンビニ仏教大学のトリ・ラトナ・マナンダール副総長、ロータ ス研究センターのバドラ・ラトナ・バジラチャーリヤ所長をはじめ政府関係者、仏教学者、市民ら100人が出席。ネパール平和会館(7月31日)、トリブバ ン大学(8月1~2日)、ロータス研究センター(同3~4日)の3会場で展示され、多くの市民が鑑賞した。
「東洋哲学研究所とネパールSGIが、仏教の根本思想を伝える法華経の展示会を、このように開催したことに心から感謝申し上げます」――開幕式のあいさつに立ったマナンダール副総長は語った。
古来、「諸経の王」と讃えられてきた法華経。古くからヤシ科の多羅樹の葉「貝葉」などに書き写されてきた「写本」は、実物を見ることが困難であり、マイクロフィルム等の資料も不鮮明であるとの問題があった。そこで、東洋哲学研究所は、創価学会の委嘱を受け、写本を所蔵する各国の博物館、学術機関等と協力 し、鮮明に撮影した「写真版」と、経文の読みをローマ字に転写した「ローマ字版」を「法華経写本シリーズ」として12冊にわたって刊行し、写本研究を推進 してきた。
法華経展は、これらの成果を集約したパネルや、世界の研究者から贈られた「法華経写本文物」を紹介するもの。オーストリア、ドイツ、タイ、香港、スペインなど世界各地で開催され、このたび、“釈尊生誕の国”ネパールでの展示となったのである。
池田SGI会長はメッセージを贈り、15年前に訪れたネパールでの開催に対し、心からの祝福を伝えた。
開幕式では、ネパール女子部による歓迎の歌と、灯明の点火に続き、マナンダール副総長、バジラチャーリヤ所長が祝辞を述べた。
マナンダール副総長は1995年、SGI会長がネパールでトリブバン大学の名誉文学博士号を受章した時、同大学の評議会の一員だった。副総長は当時を振り返った。
「SGI会長がトリブバン大学から名誉称号を受章されたことは、ネパールにとって名誉なことでした。記念講演で、会長が一貫して、仏教の教えこそが、人間 の生命の中に平和を築くことができ、そこに立脚した人間主義こそが人類が直面する課題を解決できると強調されていたことは今でも耳朶に残っております」
バジラチャーリヤ所長は「私たちロータス研究センターも、法華経の精神を保持し、すべての人々にその精神を伝え、後世に残すために研究活動をしておりま す」「人々を現世の苦しみだけではなく、永遠の苦悩から解き放つのが、法華経の思想です。今回の法華経展の主題である“調和と共生の哲学”を、創価学会は “現実の世界”に広めている団体です」と語った。
開幕式の後、出席者が展示を鑑賞。来賓として参加したカトマンズ市のP・L・シン元市長は「池田博士のリーダーシップのもと、創価学会が法華経写本を出版 していることは、後世にとって偉大な業績となるでしょう。ネパールで初の法華経展に参加できたことは、とても名誉なことです」と感銘を語った。
池田SGI会長のメッセージ
釈尊生誕の地、そして人類の憧れの地であるネパールで初めての開催となる「法華経―平和と共生のメッセージ」展を心よりお慶び申し上げます。釈尊が、人類が直面する生命の根源的な苦悩を解決せんがために真理の探求の旅を決意したこのネパールの地における「法華経」展の開催に、私は、深い意義を感じ ています。
今から15年前の1995年11月、私は、若き日より憧れを抱いていました貴国のカトマンズを初めて訪問させて頂きました。滞在中、雄大なヒマラヤの峰々を仰ぎつつ、各界のリーダーとの対話をはじめ、トリブバン大学では「人間主義の最高峰を仰ぎて―現代に生きる釈尊」と題して記念講演をさせて頂いたこと は、今でも鮮明に心に残っています。
『法華経』をはじめとする仏典は、二千数百年にわたり、東洋諸民族の精神的主柱となって、豊潤な文化の華を咲かせてきました。
今回の展示には、創価学会が、東洋哲学研究所に編集を委託し、1997年より『法華経写本シリーズ』として出版に取り組んできた写本を中心に展示されています。
仏教は、南アジア、西域、中国、韓半島、日本、そして東南アジアの文化・文明の基調となり、その精神の結晶として多くの「仏典」が編纂され伝承されてきま した。私たち東洋の諸民族は、仏典の中に釈尊以来の“宇宙生命との対話”を見出し、宇宙根源のリズムを「法」として表現し続けてきたのです。
東洋的思考の特徴は、自己(内なる宇宙)と大宇宙(外なる宇宙)との対話、「宇宙生命」への融合、そして顕在化にあります。つまり、「内在」と「超越」の相即です。
仏教において、釈尊は、広大なる自己自身の「内なる宇宙」を探求し、その究極において自己を超克し、「外なる宇宙」と一体化した「宇宙生命」そのものを、法(ダルマ)として覚知したのです。
釈尊の覚者としての「智慧」と「慈悲」が民衆救済へと向かう時、仏教史を飾る多くの仏典が編纂されました。その中で、特に『法華経』は、自ら、釈尊の悟達の法(ダルマ)の表出と体現を宣言した経典です。『法華経』が東洋の諸民族に最も親しまれ、広く伝播し、人々の「魂」を救済してきたのも、この経典の内包する深遠な宗教性―宇宙生命との融合の境地とその平易なる表現法にありました。そこで私は、『法華経』の特質について三点にわたって要約してみたいと思います。
第一に「万物共生の思想」、第二に「“永遠なるもの”の探求」、第三に「平和創出への行動」であります。
第一の「万物共生の思想」は、『法華経』の「方便品」をはじめとする前半部分に展開されています。
「方便品」には、仏がこの世に出現した目的、即ち「一大事因縁」が、衆生の「仏知見」を「開き」「示し」「悟らしめ」「仏道に入らしめる」こととして明かされています。「仏知見」とは、宇宙生命に具わる光り輝く智慧のことであり、中国の天台は「仏性」と同義に解釈しています。
『法華経』では、二乗・女人等を代表に挙げて、全ての人々の生命の「仏知見」の内在とその顕在化を力説しています。ここに人種・民族・ジェンダー・職業・ 文化を問わず、全ての人々に「仏知見」が具わっており、その顕在化によって自他ともに幸福への道を開くことができるとする、人間の本質的「平等性」が示されるのです。この仏知見(仏性)の内在こそ、仏教の「生命尊厳」の根拠なのです。
人種・民族・ジェンダー・職業・文化等の差異にかかわらず、否、その差異のゆえに、相互に尊敬しつつ、全ての人間がその内なる可能性を顕在化しつつ生を営む時、「共生・共存」の「地球文明」が浮かび上がるのではないでしょうか。
「薬草喩品」では、「共生・共存」のあり方を、自然生態系にまで広げて「万物共生」の姿として描きあげています。
「三草二木」の譬えとは、種類や大きさの異なる草木(三草二木)が空一面の雲から降り注ぐ雨に潤されて、平等に潤いながらもそれぞれの特質に応じて生育するという譬喩です。草木の生育する大地、空から降り注ぐ雨は、仏の説法として表現される「宇宙生命」の恵みであり、万物生死の基盤です。日本の日蓮は、草木の共生の姿を「桜梅桃李」と表現しています。草木として表示される自然生態系とともに、すべての衆生が栄えゆく姿が仏教の描く「地球文明」の方向性とい えるでしょう。
第二の「“永遠なるもの”の探求」は、『法華経』では、まず「宝塔品」における「宝塔」の出現から開始されています。
宝塔品では、大地から「宝塔」が涌現して、その塔の中から過去の仏である多宝如来が釈尊の説法が真実であることを讃えます。
さらに、「涌出品」になると、この娑婆世界の下の虚空にいた六万恒河沙という膨大な数の地涌の菩薩が大地を割って出現すると説かれています。
そして「寿量品」では、この大菩薩の出現を契機として、弥勒菩薩の質問に応じる形で、釈尊の本地―“久遠の仏”即ち“永遠なる仏”が明かされるのです。
日蓮は、阿仏房という弟子から、「宝塔」の意義について問われた時、それはあなた自身の生命であると答えています。つまり、一個の人間生命に内包された 「宇宙生命」が輝ける宝塔として出現したのだとの意であります。そして天台は、大地の底、虚空のことを「法性の淵底」と表現しています。この万物が生死を織りなす現実世界の深奥の場―それは釈尊が覚知した「宇宙生命」それ自体です。
“久遠の仏”は“久遠の法”(ダルマ)と一体であり、宇宙根源のリズムそのものを生きる仏です。
「寿量品」では、「娑婆世界説法教化」の文が示す通り、生死流転の現実世界を超越しつつも、現実世界へと衆生救済のために顕在化する“久遠の仏”の「永遠性」が明かされています。 “久遠の法”と一体の“久遠の仏”は、永遠なる救済仏であり、その「智慧」と「慈悲」の働きは、「未(いま)だ曽(かつ)て暫 (しばら)くも癈(はい)」したことがないのです。
第三の「平和創出への行動」をなす主体者を、『法華経』では「永遠なる宇宙生命」から涌現した地涌の菩薩や、「薬王品」以下の各品に説かれるさまざまな菩薩群として描きあげています。薬王は医学・保健の面を、妙音は音楽に象徴される芸術の開花を、普賢は学問・思想の貢献を、そして観世音は民衆の切なる現世 的要望に耳を傾け、「無畏」の境地を与えゆく勇者として描かれているのです。
それぞれの菩薩的人格の中には、民衆救済への「慈悲の精神」が漲っており、それぞれの領域から「平和の文化」創出への使命を果たす誓いの行動が展開されています。
その中でも、世界平和との関連性において注目すべきは、不軽菩薩です。不軽菩薩は、「我は深く汝等を敬う」と言い、彼を迫害する人々を含めて、全ての衆生 に内在する「仏性」を「但行礼拝」し、その顕在化を促し続けたのです。あくまでも、対話・非暴力に徹する不軽菩薩の中に、平和を希求し行動する今日の「世界市民」の姿を見出せるのではないでしょうか。
このように『法華経』は、「仏性」の内在と顕在化という人間の本質的平等性に立脚する「共生・共存」の思想から、その淵源を“永遠なるもの”―「宇宙生 命」としての“永遠の仏”“永遠の法”に求めつつ、さらに人類平和の創出のための「世界市民」像を菩薩群の活躍として指し示す経典です。
万人に尊極の仏性が存するとの思想を基盤とした、人間への限りない信頼と尊敬を脈打つ『法華経』が、本展を通して、ネパールの人々の豊かな心、他者に開かれた人間性と深く共鳴し、新たな文化創造への貴重な機会となりますことをお祈りしております。
マナンダール副総長(ルンビニ仏教大学)のあいさつ
私が、SGIのことを知るきっかけとなったのは、35年前のことであります。イギリス留学中、寮にいた日本人がSGIのメンバーだったのです。この友人は、私がネパールの出身であり、仏教徒であることを知ると、日蓮大聖人の仏教について話してくれました。また、SGIの会長でいらっしゃる池田博士の思想や哲学についても教えて頂き、博士の講演録も頂きました。SGIの会合へも何度か誘われる機会がありました。会合には、スリランカ、タイ、カンボジア からの人々が参加されていました。そこでは、メンバーの方々が南無妙法蓮華経と唱えておられました。
1995年、池田SGI会長がネパールを訪問された時、トリブバン大学の評議会の一員であった私は、池田博士を大学でお迎えする光栄を賜りました。大学の卒業式の席上、博士は、仏教についての特筆すべき素晴らしい記念講演をして下さいました。また、トリブバン大学からの名誉博士号授章もネパールにとって名誉なことでありました。池田博士が、一貫して、「人間主義こそが人類が直面する課題を解決する根本の思想であり、仏教の教えこそが、人間の生命の中に平和を築いていくことができる」と強調されていたことは、今も耳朶に残っております。今回、東洋哲学研究所そしてネパールSGIが、このように仏教の根本思想を伝える展示会を開催してくださったことに心からの御礼を申し上げます。また、このように人類の遺産である法華経の写本を刊行している創価学会の業績は素晴らしいと思います。仏教、法華経を研究する学者や学生にとって有益なものとなる ことでしょう。私は、今回の展示会を、学者や研究者だけではなく、より多くの方々に見て頂き、平和と共生のメッセージを謳った法華経について学んで頂きたいと念願しています。
バジラチャーリヤ所長(ロータス研究センター)のあいさつ
ネパールでも日本と同様、法華経への信仰があります。それは、日本とネパールは、同じ大乗仏教を行じる国だからであります。環境が悪化し、人々が苦悩に陥るときにこそ、法華経が「薬」となり、人々の苦しみを取り除いてきました。11世紀から15世紀にかけて、多くのネパール人は苦しんでいました。その時代、人々を癒したのが法華経だったのであります。法華経は、ネパール人にとって尊敬すべき経典であります。
私たち、ロータス研究センターも、法華経の精神を保持し、全ての人々にその精神を伝え、また、後世に残していくために研究や活動に力を入れております。
19世紀に多くの写本が、ネパールから海外に持ち出されてしまい、現在、世界の様々な図書館や博物館が所有しています。これに対し、創価学会の皆さまは、 その写本をこのような形で出版してくださり、わが国にももたらしてくださった。そのご努力に心からの感謝と御礼を申し上げます。
人々を苦悩から解き放つのは、法華経の思想であります。現世の苦しみだけではなく、永遠の苦しみからの解放、それが法華経の思想であります。
創価学会は、今回の「法華経展」の主題である調和と共生のメッセージを現実の世界で広めている団体であります。そのような団体と協力して展示会をさせて頂くことに、心から感謝申し上げます。