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「法華経――平和と共生のメッセージ」展(マレーシア・ISTAC展)

●マレーシア・国際イスラーム思想・文明研究所(ISTAC)での開幕式及び記念シンポジウム

イスラーム文化圏であるマレーシアで2度目となる「法華経――平和と共生のメッセージ」展の国際イスラーム思想・文明研究所(ISTAC)での開幕式が9月8日、首都クアラルンプールの同研究所で盛大に開催された。

同展は、東洋哲学研究所とともに、中国・敦煌研究院、マレーシア創価学会(SGM)が主催。インド文化国際アカデミー、ロシア科学アカデミー東洋古文書研究所、マレーシア国民統合省、ISTAC、マラヤ大学文明間対話センターが後援した。展示品は〝ペトロフスキー写本〟〝ギルギット写本〟などの法華経写本(複製品)とともに、仏教伝播の歴史や敦煌莫高窟をはじめ、創立者・池田先生の文明間・宗教間対話の軌跡を紹介するパネルが展示された。同展はISTAC、マレーシア創価学会と東洋哲学研究所が主催し、国民統合省が後援する記念行事「平和と共生の普遍的価値」の一環として位置づけられ、ISTACのよる「イスラームにおける平和と共生」展も同会場で行われた。

 

2014年以来、マレーシアでは2度目の開催となる法華経展。同国は、人口の半分以上がイスラーム教徒であり、憲法でイスラームを国教(連邦の宗教)と定めている。法華経展として、イスラーム文化圏初の開催となった2014年のマレーシア展は、会期中7万人の鑑賞者が訪れ、「法華経が多くの国に伝えられた事実は、非常に興味深いことです。なかでも、アラビア文字に似た文字の写本を見て、文明間の対話があったのではないかと思うのです」(マラヤ大学人文学研究クラスタのライハナ副院長※当時)などの反響が寄せられた。法華経展は、2019年には隣国で人口の9割がイスラーム教徒のインドネシアでも開催(2会場で2万4000人が来場)され、東洋哲学研究所が進める文明間・宗教間対話を象徴する行事となっている。

 

開幕式には、主賓として、国民統合省のアロン・アゴ・ダガン大臣代理のサラスワティ・カンダサミ副大臣らが列席。スペイン、イラン、アゼルバイジャンの駐マレーシア大使をはじめ、同国の教育・学術界、宗教界の代表、マレーシア国際イスラーム大学の学生、SGMのメンバーなど300人が出席。オンラインでも配信された。ISTACのアブデルアジズ・ベルグー所長、SGMの許錫輝理事長、東洋哲学研究所の田中亮平所長が主催者を代表して挨拶。来賓の国際イスラーム大学アミール・アクラミン・シャフィー副学長は、法華経展が開催される意義を強調し、「法華経が説く普遍的な悟りの可能性と全ての存在に対する慈悲と尊重はとても重要です。東洋哲学研究所が1962年に創立されて以来、法華経の教えを通じて平和を促進してきた崇高な理念と取り組みは高く評価されるものであり、この展示会が異なる宗教間の対話と協調の重要な機会となっていることに深く感謝したいのです」と語った。

 

国民統合省のサラスワティ・カンダサミ副大臣が、アロン・アゴ・ダガン大臣のメッセージを代読。「法華経展は大乗仏教の最も深遠な経典の一つである法華経の教えを紹介したものであり、そこには生命の尊厳の尊重、全ての存在の悟りの可能性、慈悲の重要性が強調されています。このことは、現代世界に大きなメッセージを伝えており、法華経の教えが単なる歴史的遺物ではなく、今日の世界においても私たちを導き、啓発を与える生きた哲学であることを物語っています」と寄せられた。その後、テープカットが盛大に行われ、SGMメンバーによる池田先生の長編詩「平和を! 平和を! そこに幸福が生まれる」の朗読が行われた。終了後、国民統合省とISTAC、SGMおよび東洋哲学研究所による記念シンポジウム「平和と共生」が行われた。ここでは、東洋哲学研究所の田中所長が「法華経の理念と文明間対話の意義」、ボイ・チョンメイン海外研究員が「平和と共生の普遍的価値」をテーマに講演した。

 

ISTACのオスマン・バカール名誉教授は「イスラームとは――平和と共生の視点から」と題し、イスラームの教えと法華経の教えに共通する平和と調和的共生の理念を強調。特にクルアーンが全ての神聖な書物を尊重し、理解することを奨励している点に言及し、ムスリム(イスラーム教徒)が法華経を含む他の聖典を研究することの重要性を述べた。さらに、「マレー文化における蓮は平和を象徴しますが、それはイスラーム神秘主義と仏教の教えに共通するものであり、池田SGI会長の思想である平和と共生もイスラームの教えと合致しています」と語った。バカール名誉教授は「法華経展を通じて、イスラームと仏教の対話と相互理解が可能となっていくであろうし、両者の共通の価値観に基づく平和構築をしていくことが大切です」と望んだ。

 

同じくISTACのヌルル・アイン・ビンティ・ノーマン研究部長は「考えること・受け入れること・信じること――思想と信仰を通じた人類の旅」をテーマに。イスラームと仏教との共通点を探った講演では、特に植物の種の比喩を用いて、人間の思想と信仰の発展を解説。法華経展のテーマである「平和と共生」に通じる考えであると述べた。そして「イスラームと仏教の教えが、思考を通じて神の導きや悟りを求め、心で真理を受け入れ、魂で信念を深めていくというプロセスが共通している」と指摘。両宗教の対話と相互理解の重要性を強調しつつ、「異なる宗教の本質は光のように同じであり、人類の精神的成長の過程を表しています。これは池田SGI会長が長年提唱してきた宗教間対話の意義と同じなのです」と述べた。

 

その後、開幕式の参加者で内覧会を開催。ISTACの1階部分では、創立者・池田先生のメッセージやアーノルド・トインビー(歴史学者)、アブドゥルラフマン・ワヒド(インドネシア元大統領)、マジッド・テヘラ二アン(平和学者)らとの宗教間・文明間対話の軌跡を記したパネルとともに、昨年11月に校訂本が発刊され、現在までに20点が出版された「法華経写本シリーズ」などを紹介している。地下1階には、仏教伝播の歴史をまとめ、〝ペトロフスキー写本〟〝ギルギット写本〟など、最古の部類とされる法華経写本の複製を展示。写本作成にあたって使用された鉄筆・墨壺(複製)なども公開された。また、敦煌のコーナーでは莫高窟の壁画に描かれた二仏並座や女人成仏、不軽菩薩を紹介するパネルを設置し、法華経に内在する万人尊敬と生命尊厳の思想を紹介している。この日の模様は、マレーシア国営放送のRTM、ベルナマTV、8TVのほか、星洲日報、ベルナマ通信社が取材に訪れた。同展は9月27日まで開催する(入場無料。会期中無休)。

 


<国民統合省 サラスワティ・カンダサミ副大臣>

東洋哲学研究所の素晴らしい主導により、イスラームと仏教の異なる宗教が一つに結びつき、平和と共生という観点から両宗教の共通点を見出すことができました。特に、世界で対立を目にする今の時代だからこそ、この活動は根づいていかなければならず、さらに努力をしていく必要があります。そして、より多くの場所で、国々で開催していくべきです。今回のイベントを通じた対話が宗教間対話の重要性を信じる人々の理解を深め、すべての宗教に対して敬いの心を持つ機会となっていくでしょう。自身の信仰を深めながら、他の宗教について理解し敬っていくことが、特に多宗教、多民族の地域を持つ国にとっては、平和と共生のために非常に重要です。私はこの運動を歓迎し、マレーシアの人々の間に統合をもたらしていけるよう、このようなイベントをさらに開催するように訴えていきたいと思います。

 


<シンガポール国立大学 シェド・ファリド・アラタス教授>

法華経展は非常に刺激的で心躍るものでした。展示会というアイデアは常に素晴らしいと思います。なぜなら、人々にとって非常に抽象的に思える概念を具体化するのに役立つからです。平和と調和について語る時、それは抽象的な考えであり、人々にとって想像するのが難しいかもしれません。これらの抽象的な考えを、実際に具現化し、人々の理解の助けとなっていると思います。

 


<ISTAC アフマド・ムラド・メリカン教授>

私は池田大作氏と対談集を編んだマジッド・テヘラ二アン博士の研究をし、実際に会ったこともあります。彼が戸田記念国際平和研究所の所長を務めたこともよく知っています。池田氏と彼が対話をした『21世紀への選択』は、日本人にイスラームについての理解を深める機会を提供し、グローバル文明という新しい分野を開拓しました。そして、イスラームの精神的側面を仏教との対話を通じて探求し、一般の日本の人々に影響を与えました。このような展示会を鑑賞することができ、心から嬉しく思います。

 

◆主催:東洋哲学研究所、敦煌研究院、マレーシア創価学会(SGM)

◆企画・制作:東洋哲学研究所

◆後援:ロシア科学アカデミー東洋古文書研究所、インド文化国際アカデミー、マレーシア国民統合省、国際イスラーム思想・文明研究所(ISTAC)、マラヤ大学文明間対話センター(UMCCD)

◆会場:国際イスラーム思想・文明研究所(クアラルンプール)

◆開催日:2024年9月8日~27日

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