中国・敦煌研究院と共同シンポジウム「敦煌と法華経」
◆主催:敦煌研究院、東洋哲学研究所
◆会場:敦煌研究院(中国・甘粛省敦煌市)
◆開催日:2018年9月5日
中国・敦煌研究院と東洋哲学研究所の共同シンポジウム「敦煌と法華経」が、甘粛省敦煌市の同研究院で開催された。これは、日中平和友好条約締結40周年と、明年の同研究院創立75周年を記念するものである。シンポジウムには、両機関の代表とともに敦煌学の研究者ら約50人が参加した。
敦煌研究院は1944年に前身となる敦煌芸術研究所が設立。莫高窟の保護・宣揚・研究の為に、長年さまざまな活動を行っている。東洋哲学研究所創立者の池田SGI会長は、敦煌研究院が果たす役割とその存在に賛同し、同院の常書鴻名誉院長と対談集『敦煌の光彩』を発刊。また、段文傑初代院長とも語らいを重ねるとともに、東洋哲学研究所におけるシルクロード研究等を推進してきた。同研究院は、SGI会長の行動に対して、「名誉研究員」称号(1992年)、「永久顕彰」(1994年)を授与。同研究院がある甘粛省からは、「敦煌文化宣揚特別貢献賞」(2001年)が贈られている。
また、同研究院は2006年より、東洋哲学研究所が企画・制作する「法華経――平和と共生のメッセージ」展を後援。さまざまな資料・画像の提供などを行ってきた。シンガポールでの法華経展(2017年10月~11月)では、共催団体として協力をしている。
シンポジウムに先立って行われた敦煌研究院と東洋哲学研究所との学術交流協定の締結では、法華経展をはじめ、多くの分野でのさらなる協力と交流の促進が訳し合われた。シンポジウムでは、世界遺産・莫高窟にあって質・量ともに重要な意義を持つ法華経をテーマとして行われた。
開催にあたって池田SGI会長はメッセージを送り、法華経に説かれる「如我等無異」の一節を通して、「仏の目的は、衆生を自分と等しい永遠性の幸福の境地に導くことにある。即ち人類の精神性と境涯を限りなく高め、平和な世界を創造していくことにあります。まさに法華経が『諸経の王』である証しであります」と強調。法華経が「生命尊厳の極理」「万物共生の光源」「平和創出へ世界市民の行動と連帯を示す指標」であることを示し、「この法華経にこそ、21世紀文明を照らしゆく英知の光があります。そして私は、シルクロード文化の集積地として、多様な民族や人種が交流した敦煌が、今まで以上に世界の民衆に〝美の光彩〟を放ち、生命の活力を贈りゆくかけがえのない〝精神のオアシス〟として、人々に平和と共生と人道のメッセージを発信し続けていくことを強く確信してやみません」と念願した。
東洋哲学研究所の川田洋一顧問は、敦煌研究院の歴代院長と池田SGI会長との友誼の歴史と敦煌芸術の底流にある信仰の力を踏まえて挨拶。同研究所・研究事業部の蔦木栄一副部長が「世界に広がる法華経展」をテーマに世界16カ国・地域で80万人が鑑賞した法華経展について発表した。
両機関からは以下の論考が発表され、活発な質疑応答も行われた。
<第1セッション>
●「莫高窟第285窟を『法華経』の角度から解説する」(敦煌研究院 張元林研究員)
●「中国天台における『観音経』(『法華経』観世音菩薩普門品)の注釈について」(東洋哲学研究所 菅野博史副所長)
<第2セッション>
●「敦煌に居留した于闐人の法華信仰」(敦煌研究院 張小剛研究員)
●「敦煌の二仏並坐の淵源について―失われた街を訪ねて―」(東洋哲学研究所 山田勝久委嘱研究員)
<第3セッション>
●「吐蕃統治期の敦煌における法華信仰」(敦煌研究院 趙暁星研究員)
●「敦煌写本『法花行儀』と唐代法華思想」(東洋哲学研究所 松森秀幸研究員)
シンポジウムの最後には、趙声良副院長が挨拶に立ち、「全てが法華経を中心に構成された内容で、それぞれが違った角度から成果を導き出しています。今回のシンポジウムを通して、新たな法華経研究を進められたのではないでしょうか。今後もさらに交流・研究を進めていきたい」と総括を述べた。
参加者からは「発表のレベルが非常に高かった。法華経の学術・芸術研究を大きく引き上げたのではないでしょうか」(陳瑾館員)、「法華経展が世界的に広がっている事実を知りました。法華経の精神は多くの人々や地域に影響を与えていくでしょう」(方喜涛助館員)などの感想が寄せられた。