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ヨーロッパ科学芸術アカデミーと共同シンポジウム「医学と宗教」

◆主催:東洋哲学研究所、ヨーロッパ科学芸術アカデミー

◆会場:戸田記念国際会館(東京・新宿区)

◆開催日:2012年6月24日 


 「ヨーロッパ科学芸術アカデミー」(The European Academy of Sciences and Arts/本部=オーストリア・ザルツブルク)は、多様な学問分野から選出された研究者が協力して人類の諸課題に立ち向かうことを目的に創立された。ポスト冷戦の時代が始まった1990年のことである。以来、「学際性」「国際性」を基調に多くのプロジェクトを展開。欧州のほか、北南米、中東、アジアなど50を超える国々に知の連帯を広げている。28人のノーベル賞受賞者も会員である(2011年10月現在)。

 活動のひとつとしてキリスト教、仏教、イスラーム教、ユダヤ教の「4大宗教間対話」を推進。仏教を代表して、SGI(創価学会インタナショナル)と東洋哲学研究所が交流を重ねてきた(9回のシンポジウムに協力)。

 フェリックス・ウンガー会長自身が東洋哲学研究所創立者の池田SGI会長と対話を重ね、対談集『人間主義の旗を――寛容・慈悲・対話』(東洋哲学研究所刊)を発刊している。またSGI会長は同アカデミーから「特別顕彰メダル」「功労黄金賞」「平和の光」賞が贈られており、日本人初の「名誉評議員」でもある。

 

 「医学と宗教」をテーマとした今回のシンポジウムは、東洋哲学研究所創立50周年の意義も込めて行われ、6人の代表が、仏教とキリスト教の観点から見た「治癒」や「医学の倫理」を論じた。

 

 

川田洋一所長による「釈尊にみる治癒体験」の発表に続いて、ウンガー会長が「医学における倫理――心臓外科医からの考察」と題して講演。

まず、「健康」は人類の最も初源的な願望であるとし、その実現のための医療の歴史や人間観・生命観の変遷に言及した。そして、医学はあくまで文化の一部であり、進歩し続ける医療技術を生かすためには社会の文化・価値観が重要であるとし、東哲創立者との対談集で「生命こそ最高の価値」との点で完全に意見が一致したと述べた。さらに、あるべき医療のすがたとして、古代ギリシャの医聖・ヒポクラテスによるとされる「ヒポクラテスの誓い」に表現された、患者第一で誠実に奉仕する医療について論じた。

 

講演の後、以下の発表が行われた。

 

 

(1)稲光禮子氏(東洋哲学研究所委嘱研究員)

「仏教と治癒――看護学の立場から」

 

(2)エルマール・クーン氏(ヨーロッパ科学芸術アカデミー宗教部門長)

「神学的観点からの治癒」

 

 

(3)中泉明彦氏(京都大学大学院教授・東洋哲学研究所委嘱研究員)

「現代医療の課題――医師・科学者・仏教徒の立場から」

 

(4)木暮信一氏(創価大学大学院教授・東洋哲学研究所委嘱研究員)

「生命倫理問題に対する仏教の視点」  


フェリックス・ウンガー氏 略歴

1946年生まれ。医学博士。心臓外科医。ウィーン大学医学部卒業。1985年~2011年、ザルツブルク大学病院心臓外科医長。1990年、ヨーロッパ科学芸術アカデミーの創立とともに、創立者の一人として会長に就任。同アカデミーの心臓病調査研究所所長も務める。『健康こそ宝――21世紀初頭におけるヨーロッパのヘルスケア戦略:欧州議会リポート』(2004年)、『Cardiac Reconstructions(心臓の再建術)』(1990年)、『21世紀の医学の基本理念』(2006年)など著書多数。ブダペスト大学、ティミショアラ大学の名誉医学博士、創価大学、マリボー大学の名誉博士、マールブルク大学名誉教授。

 

エルマール・クーン氏 略歴 

1961年生まれ。神学博士(ウィーン大学)。ヨーロッパ科学芸術アカデミー宗教部門長、ピウス・パルシュ典礼学会理事。ウィーン教育大学講師、宗教の自由権のための「オーストリア国際NGOキリスト教連合」事務局長、ウィーン大司教教育長官アシスタントも務めている。

 

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